RION Techinical Journal Vol.1
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深刻化する公害問題に対応すべく騒音計開発に乗り出す 国や自治体に寄せられる典型7公害と呼ばれるものには大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭がある。その中で苦情件数と、感覚的・心理的被害が多いのが騒音だ。騒音による苦情件数はこの20年増加か横ばい状態である。  リオンが日本で初めて騒音計を発売したのは1955年のこと。戦後の復興期、日本の都市部を中心に、工場や建設現場、交通機関の騒音が社会問題となっていた時期である。 「国際的にはもっと前、1920年代にニューヨーク市で建設工事、自動車騒音、高架鉄道で騒音問題が発生し、1930年には騒音測定が行われていました。小林理学研究所(リオンの設立母体)の創始者の1人であり、リオンの第4代社長であった佐藤孝二が1953年に第1回国際音響学会へ日本代表として参加した際に米国で騒音計を入手し、開発を進めたのがリオンにおける騒音計事業のはじまりです」  当時、マイクロホンやイヤホンのセンサ類、補聴器などの音響製品を生産していたリオンは、それらの製造技術と小林理学研究所の研究成果を活かしながら、測定範囲45~130ホンの指示騒音計「N-1101」を発売。各都市の騒音対策や産業衛生、騒音関係の研究者などに広く採用され、好評を博した。以降リオンは東京都の公害研究所をはじめとする行政機関および小林理学研究所と連携しながら、より優れた騒音測定器を開発、提供することとなる。 1960年代に入り高度成長期を迎えると、日本各地で公害問題が深刻になり、 1967年には公害対策基本法、1968年には騒音規制法が公布、1970年には日本工業規格JIS C 1502が制定され、地方自治体や企業からの騒音計の需要が急増した。  当初、計量法によって「計量器」に指定された騒音計は製造許可が必要なだけであったが、1973年に国の検定が必須となりその承認を1974年に国内で初めて取得したのが「NA-09」である。このモデルが深刻化した騒音公害の測定用として爆発的に普及していった。そこから、具体的な対策立案に役立つ記録機能や分析機能が求められるようになり、リオンはさまざまな技術革新を達成しながらこれに対応していく。  1970年代には公害問題がピークを迎え、公害測定が全国各地で行われるようになった。その中で騒音規制への関心を高める役割を果たしたのがリオンの街頭騒音デジタル表示装置だ。初めて設置されたのは東京・渋谷駅前と西銀座の交差点の2ヶ所だった。騒音レベルを大型のデジタル表示器で可視化することにより、人々の意識を変化させたのだ。 「騒音計屋」から「音響計測機器屋」への脱皮 1978年にはJISや計量法に加え国際規格であるIEC規格に対応した「NA-20」が誕生。これがその後の騒音計のベースとなる。  当時のリオンは騒音計メーカーとしてのポジションを確立していたものの、音響計測機器メーカーを名乗るにふさわしい高精度なシステムを提供するには至っていなかった。そこで「騒音計屋」から「音響計測機器屋」に脱皮を図る開発を進めていく。【N-1101】(1955年)リオンの騒音計第一号であり、我が国最初の小型騒音計。測定範囲45~130ホン。各都市の騒音対策や産業衛生などに広く用いられた。【NA-07】(1964年)携帯用の指示騒音計。マイクの取り付けや校正装置、ハンドルなどにも最新の工夫が施されている。出力端子がメータ回路と独立しているためメータを見ながら分析や録音が可能。【NA-09】(1974年)日本で初めて普通騒音計計量器として型式承認S-1号を取得。コンデンサマイクロホンを搭載した「NA-09」は、深刻化した騒音公害の測定用として爆発的に普及。【NA-20】(1978年)隅々まで気を配り、製品にまで昇華させた「NA-20」。構想から発売まで3年を費やした。JISや計量法に加え国際規格であるIECにも対応。7

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