RION Techinical Journal Vol.2
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 注射剤は直接人体に投与されるため、注射剤中の不溶性微粒子の粒径と粒子数は薬局方において規定されている。製薬業界においては他の業界とは異なり、不良品の発生を工場で確認することができないため、最悪の場合、患者にまで影響が及ぶこともある。従って、その製造工程および検査では、注射剤に不溶性微粒子や微生物および異物が含まれていないことを科学的に証明できる方法で行う必要がある。 現在リオンでは注射剤管理に特化した最新の光遮蔽型自動微粒子測定装置「KL-05」を発売しているが、日本における液中微粒子計測器開発の歴史は1980年頃に遡る。当時、外国製の液中微粒子計測器は多くのパーツをコンポーネント化した大がかりなもので、1000万円を超える大変高価な製品だった。そこでリオンはオールインワンで持ち運びができ、粒子検出部も交換できる液中微粒子計測器の開発に着手。1984年に純水から作動油まで計測可能な国産初の液中微粒子計測器「KL-01」およびそのセンサ「KS-60」を400万円で販売した。この光遮蔽式のセンサ「KS-60」を搭載した「KL-01」が「注射剤管理」を目的とした液中微粒子計測器の始まりとなる。機能面でも価格面でも海外製品に優位に立つことに成功したリオンは、そこから半導体製造過程で使用する強い腐食性を持つ薬液「フッ化水素酸」の計測を可能とする液中微粒子計測器などの開発にも成功。その後、1998年に医薬品工場における注射剤中の不溶性微粒子の計測に特化した液中微粒子計測器「KL-03(システム)」を発売する。この「KL-03(システム)」は、センサ「KS-70」、サンプラ「KL-03」およびソフトウエア「KF-10」を搭載したパソコンで構成される。「医薬品業界向けという、ターゲットを明確にしたのが『KL-03(システム)』です。注射剤や輸液など、人体に直接投与される液体状の薬剤に対しては、日本薬局方や米国薬局方では、その中に含む粒子の大きさや個数の限度が定められています。これを測る測定器についても、校正方法や性能試験方法に関する規定があります。1997年に発行された第十三改正日本薬局方の注射剤の不溶性微粒子試験法第一追補に収載された、『光遮へい型自動微粒子測定装置による方法』に適合した製品としてリリースされました。日本薬局方と米国薬局方では性能試験の規格が異なるのですが、どちらの薬局方にもきちんと適合した製品を開発しようという想いがありました」1984年、国産初の液中微粒子計測器を発売8【KL-01】(1984年)医薬品分野などから安価で液中の粒子を計測する装置を望む声が高まっていた背景から、1984年にリオンが開発した「KL-01」。純水から作動油まで計測可能な国産初の液中微粒子計測器。オールインワンで持ち運びができ、粒子検出部も交換が可能。機能面でも価格面でも優位に立つことに成功し、製薬会社や油市場のユーザーから信頼を得た。以降、リオンの製品は微粒子計測器市場の一翼を担うこととなる。【KL-03(システム)】(1998年)1998年、医薬品工場における注射剤中の不溶性微粒子の計測などに対応した液中微粒子計測器「KL-03(システム)」を販売。日本薬局方の注射剤の不溶性微粒子試験法に収載された光遮へい型自動微粒子測定装置による方法に適合した製品としてリリースされた。また、米国、欧州の薬局方にも適合。木本 幸弘微粒子計測機器事業部製造技術部担当部長。液中パーティクルカウンタに関しては、「KL-03(システム)」から開発に携わり、主にセンサ、機構部の開発・研究を行っている。

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