RION Techinical Journal Vol.2
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森本 隆司2009年入社。技術開発センター 要素技術開発室 第二グループ。耳鼻咽喉科で用いられる補聴器や医用検査機器に搭載する検査方法についての研究・開発に従事。「困っている聴覚障害者のために何かしたい」という学生時代からの志を胸に、日々研究に邁進。臨床現場での応用を目指し、時間変調伝達関数の簡易測定法を提案 長年、補聴器の研究・開発を行ってきたリオン。開発チームは日々、様々な人間の聴力に関する問題に向き合い、様々な種類の難聴に適応可能な補聴器の研究を重ねている。日本では65歳以上の人口が全人口の27%を超え、世界に先駆けて超高齢社会に突入している。今後加齢に伴う難聴者の数も増加すると予測され、高齢者の難聴対策や補聴器の活用は、健康長寿社会実現のために重要な課題と考えられている。また、難聴も認知症の危険因子の一つであることが報告されていることから、難聴の発症予防や早期診断・早期対応が求められている。 難聴を自覚するとまず耳鼻咽喉科を受診し診療を受けるが、難聴の程度を新しい聴覚検査技術の裏側TMTFのモデル化変調度の閾値は、低変調周波数の範囲ではほとんど変わらず、ある変調周波数を超えると変調周波数が増加するにつれて上昇することが報告されている。このことから、時間変調伝達関数(Temporal modulation transfer function, TMTF)は、ローパスフィルタの形状で近似できるといわれている。そのためTMTFは、ローパスフィルタのパラメータである低変調周波数における変調度の感度(Lps)とカットオフ周波数(fcutoff)の2つの値で表現可能であるといわれている。把握するために多角的な検査が行われる。一般的に難聴とは、「耳が遠くなった状態」、つまり「小さな音が聞こえない状態(最小可聴閾値が上昇)」という認識である。そのため、難聴者に対しては大きな声で話しかける、補聴器等で音を増幅するといった対応がとられる。しかし、難聴になると、最小可聴閾値の上昇に加えて、リクルートメント現象陽性、周波数選択性の劣化、時間分解能の低下が認められるといわれている。このような聴覚に備わる能力の低下により、大きな声で話しかけたとしても、特に雑音環境下では、言葉の聞き取りが健聴者に比べて困難であることが指摘されている。そのため、難聴を補償するためには、このような聴覚に備わる能力それぞれに対して正しく補償する必要がある。 こうした背景からリオン技術開発センターの森本隆司は、時間分解能指標の一つ【周波数選択性】音を周波数領域で分析する聴覚の能力。この周波数選択性を補償する技術としては、スペクトルのコントラストを強調する処理を用いることが考えられている。【リクルートメント現象】音圧が上昇すると、健聴者に比べて音がより大きくなったと感じる、つまりラウドネスの変化が大きく感じるようになる現象。補償技術としては、補聴器の入力音圧が小さい場合は大きく増幅し、入力音圧が大きい場合には増幅を抑える圧縮機能が挙げられる。時間分解能の低下の程度を把握するために。時間変調伝達関数(TMTF)測定の可能性を探求耳鼻科臨床現場において短時間で実施可能な時間分解能の測定法の構築を目的とし、時間的変調度伝達関数(TMTF)の簡易測定法を提案した技術開発センターの森本隆司に話を聞く。取材・文/横田 可奈技術開発、最前線!IN THE BACKYARD12

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