RION Techinical Journal Vol.3
10/24

戦前から続く圧電素子研究をベースに リオンの歴史を遡ると、昭和15(1940)年に設立された財団法人小林理学研究所が、その始まりとなる。設立当初から行われていたのが、圧電セラミックスなどの圧電素子の研究だ。 「今でこそリオンといえば補聴器や騒音計あるいは微粒子計などですが、当初は、圧電の研究からスタートしたと聞いています」と長年、開発に関わった下村和広は歴史を振り返る。研究成果を実用化するため小林理研製作所が設立され、これが後にリオンとなる。この間に圧電セラミックス(以下、セラミックスという)を活用する加速度センサーが開発された。昭和40(1965)年代の話であり、当時、社会問題となりつつあった公害の影響を測定するため、加速度センサーを活用した振動ピックアップが製品化され、その後は汎用ピックアップの開発が盛んに行われていった。 その頃、既にリオンには圧電素子に関する膨大なノウハウが蓄積されていた。その知見を活かして昭和50年(1975)年代には、汎用ピックアップについて一通りのラインナップが揃えられるようになった。その後、新規開発や統廃合を行いながら現在のラインアップに至っている。技術力最高峰の証、標準ピックアップ 続いて開発したのは標準ピックアップだ。標準ピックアップとは、汎用ピックアップがその性能を維持しているのかを確認するために、感度・周波数特性の校正に使用するピックアップである。いわば計測器メーカーにとっての「使命製品」であり、数あるピックアップの中でも精度に関しては頂点に位置づけられる。他の計測器メーカーが、自社製品の精度チェックに使用するピックアップでもある。 校正用として何より求められるのが動作の安定性である。測定された特性は、公的機関によって保証されなければならない。一般の加速度ピックアップとは次元の異なる精度を確保するため、製作プロセスでの技術的難易度は極めて高い。 その開発の経緯を下村は「当社は、小林理学研究所の圧電研究室で開発されたBi(ビスマス)層状酸化物を使用し、極めて高いレベルの精度と動作の安定性を確保しました。標準ピックアップに使われる素材は海外では水晶のような単結晶が主流で、当社のようにセラミックスを使っているメーカーは、知っている範囲ではなかったと思います。もとより国内初の標準ピックアップでした」と説明する。 セラミックスの素材の配合比をわずか1%変えただけで、製品特性がまったく変わってしまう。徹底したシビアさが求められる開発に成功した理由は、小林理学研究所の圧電研究室に極めて優秀な研究者が揃っていたからだ。現在の標準ピックアップに使用されているセラミックス自体は、開発当初のものからほとんど変わっていない。標準ピックアップは、既に完成の域に達している製品である。過酷な環境に対応、高温原発用ピックアップ 次に開発されたのが、高温用ピックアップである。発電所やプラントで振動測定する場合、ピックアップの設置される環境が高温となるケースも多い。そこで1980年代の前半から、高温でも使8【PV-03】圧電式加速度ピックアップを2次校正(Back to Back法による比較校正)するための基準加速度ピックアップ。ISO 5347-1「レーザ干渉分光法による一次振動校正」に従って絶対校正されており、JCSS校正証明書を発行可能。【PV-63】せん断構造で高温度の機械振動測定用ピックアップの中でも、特に原子炉施設用のピックアップ。使用温度範囲は−20℃から最高300℃まで対応。ケース材料にはステンレスを採用している。

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る