EPILOGUE-SCIENCE, SCIENCE!西田 順一技術開発センター R&D室 新市場開発G 。リオンの技術を活かし、今までリオンが経験していない新しい分野を研究・開発している。η=1+[Pas]2Zsinθ27πR9Y(θ)28tanθ9Y(θ)7tanθρ=Y(θ)[kg/m³]27Zcosθ28πR³ωzzr²zrtan-¹zi²zi=θ=+√快挙につながった「数式愛」 僕は小学生の頃から算数や理科が好きな少年でした。興味を持ったきっかけは母親で、算数が苦手だった母が子供には同じ思いをさせたくないという思いで自ら問題をつくって僕に解かせていたんです。当時から「式を解く」ことの面白さにのめり込んでいました。大学は工学部に進学し、注射針を刺さずに血糖値を計測する方法について研究していました。血液が吸収しやすい光を断続的に身体に照射すると、ごく小さな音が体内から発生します。この音を身体の表面で増幅して血液の状態を計測するというもので、そんな物理学への興味からリオンへの入社につながりました。※ ※ 現在は、技術開発センター内に3年前に新設された新市場開発グループで働いていますが、以前は音や振動といったリオンの製品に関する研究開発に携わっていました。航空機騒音の観測装置や地震計のアルゴリズムなど、どのような形で音や振動を評価して数値化するかというファームウェアの開発は、数学や物理好きな僕にとってとても興味深い仕事でした。 なかでも最もエキサイティングだった研究対象が「粘り」について。正確には「物質の機械インピーダンスを測定する技術開発」です。わかりやすくいうと納豆や卵白など粘りがあるものの状態管理や、ホイップクリームなどムース状の食品の「食感」、シェービングクリームなどの「触感」を測定する技術の開発です。今までは、ホイップクリームを泡立てた時の泡持ちが良いかどうかを評価するにはひたすら人が1時間おきに目で見て確認する方法しかありませんでしたが、それを自動かつリアルタイム監視できれば楽になると思ったのです。 僕がこの「粘り」に着目した理由は、とある食品関係の研究者からの提案がきっかけだったのですが、「粘り」って考えてみるととても不思議な世界なんでよね。もしガソリンの粘りがなくなったら給油しにくくなるだろうなとか、もし歯磨き粉の粘りが緩ければチューブから出しにくいだろうなとか、それぞれにベストな「粘り」があって、上手に設計しないと使えない製品ってたくさんありますよね。突き詰めていくと、この世に「粘り」があることは実はとても大事なことなんじゃないかと。そう考えるとより研究に没頭できたんです。※ ※ この「物質の機械インピーダンスを測定する技術開発」では、力を加えた時の物質の「動きにくさ」を数式で表すことができます。実測した機械インピーダンスから粘度、密度、動粘度を同時に導き出すこともできることを表した数式に関しては特許を取得しました。実験結果を理論立てて数式で証明できるというのは、数学好き、数式好きにとってはたまらなく喜びを感じられること。中学で連立方程式を習った時、数式がきれいに整理されていく様を美しいと感じたことを覚えています。 数式を美しい形に整理するのは、時間が掛かり大変なことです。これは、家の掃除やデスク周りの掃除をすることと似ています。最初はアルファベットがごちゃっと並んで訳がわからない状態なのですが、分類して整理できると、そこからゴールまでは早い。テトリスやぷよぷよといったゲームをクリアした時の達成感にも似ています(笑)。※ ※ 数式を解き出すと眠ることも忘れるくらい没頭してしまうので、夜に考えることは避けていました。試行錯誤したメモを見ると感慨深いです。アインシュタインの相対性理論に物質が静止している時の質量と動いている時の質量が違うことを証明した式があります。「え?本当に?そんなことあり得る?」と思うことを証明してしまう数学って本当に面白いなと思うんです。 こういった数式を解く力は、考えてみるとふだんの仕事にも活かされているんですよね。今、新市場開発を担当していますが、お客様の求めているものをヒアリングするなかで、色々な人が色々なことを言う。それを全部まともに聞いていたら整理はできません。皆が求めていることの本質とは何かを整理して、改善策として提案する作業は数式を解くことと似ているなと感じます。今後も数学の力で世の中の役に立つような技術を生み出していきたいと思っています。003粘りに粘ってリオンを支える、理科や数学好きなスタッフたち。この連載では毎回、理数系のスタッフがそれぞれの「理数愛」を語る。第三回は「数式」について。理数好きなもので。リオンスタッフのこだわりコラム物質の機械インピーダンスから粘度と密度を同時に求めるための数式西田が提示したこの数式は特許を取得。この数式が起点となって、将来、画期的な製品が開発されるかもしれない20取材・文/横田 可奈
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