RION Techinical Journal Vol.3
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液中微粒子計測器はどう応用できるか 一般的には、蛇口をひねれば飲むのに適した水が流れてくる日本の水道事情。その水道管を上流へ辿っていくと必ず、各地の浄水場に行き着く。こうした場で近年、注目を浴びているのがリオンの開発した「植物プランクトンカウンタ」だ。これは染色などの前処理なしで、液中に浮遊するピコプランクトン(0.2~2 µmの大きさのプランクトン)を含む植物プランクトン(藻類)を自動測定するというもの。水の安全をリアルタイムで監視し、浄水場のマンパワーやコスト削減につながるというこのシステムが、全国ですでに実装され始めている。 技術開発センターの関本一真は、このシステム開発においてスタート時点から関わったキーマン。自社の技術を活かせる市場のリサーチから仕事は始まっていった。液中の微細な植物プランクトン測定が可能なピコプランクトンカウンタ「XL-10A」。リオンは本製品を改造し、浄水場の水をリアルタイムで監視するシステムを構築した。このプロジェクトにおいて推進力となったキーマンたちに話を聞いていく。「以前からリリースしていた微粒子計測器の技術を応用し、新しい市場を開発できないかということでこのプロジェクトがスタートしました。そこで目をつけたのが微生物の計測です」 まず注目したのは人工透析の分野だった。血液を浄化するためには透析液を使用するが、その元となる水は水道水である。この水道水において細菌汚染の検知を行うというニーズを探っていったところ、行き当たったのが浄水場だったのである。「水道水について調べていくうち、植物プランクトンが浄水処理に悪影響を及ぼすこと、この課題が現場では深刻な障害を発生させることなどがわかってきました。そこで浄水場で利用できる計測システムがリオンの技術で実現できるかもしれないと考え始めたんです。背景としては気候変動という大きな問題があることもわかってきました。温暖化やゲリラ豪雨などの気候の変化によって湖沼や河川にピコプランクトンカウンタ「XL-10A 」植物プランクトンの数と大きさをリアルタイムに測定可能な世界初の計測器。自動希釈装置と組み合わせることで原水からろ過水まで様々な処理水を計測できる。PROJECT STORY2美しい水道水を守るために。浄水場で利用される植物プランクトンカウンタ開発の舞台裏リオンのプロダクト開発ドキュメンタリー取材・文/編集部

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