振動レベル計開発の黎明期 1967年に公害対策基本法が制定され、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、地盤沈下、悪臭に加え騒音と振動が典型7公害に指定された。当時はまだ、振動の測定基準や評価指標が統一化されていなかった。転機が訪れたのは1968年。当時の環境庁が中心となって多くの調査と研究が進められ、守田栄先生をはじめ、時田保夫先生や五十嵐寿一先生ら、小林理学研究所(リオンの設立母体)の貢献によって、JIS C 1510 振動レベル計、JIS Z 8735振動レベル測定方法が規格化された。それによってリオンが振動レベル計の製品開発にいち早く取り組むことができた。一般的な振動計(加速度センサ)は振動の大きさや周期的変化を物理量として算出するのに対し、振動レベル計は測定した振動に人体の振動感覚を掛け合わせて「振動レベルLv(単位dB)」として数値化するのが特徴である。 振動レベル計の開発に携わったスタッフに歴史を伺った。「振動レベル計は半世紀ほど前に、社会環境を背景として日本で開発され、世界に先駆けて製品性能が日本産業規格(JIS)で制定されました。測定器や評価方法、基準や限度値が振動規制法に定められ、特定計量器として計量法にも取り入れられています。その製品開発と普及にリオンが当初から関わり、先代の方々の技術や知見が受け継がれ、ニーズに沿って進化してきた製品です。」世界に影響を及ぼしたリオンの技術と思想 振動公害に向けた振動計として1967年に「公害用振動計VM-12」が販売された。振動の感覚特性を備えるが、時間重み付け特性にFast、Slowを搭載するほか、速度の単位も有していた。1974 年にリリースされた「VM-14B」は、記念すべき型式承認第一号、日本産業規格に適合する振動レベル計である。鉛直、水平3方向の受感軸を持ち、人間の振動感覚閾値を下回る30 dBからの測定を可能とした機種である。「日本で1976 年にJIS C 1510『振動レベル計』が制定されています。国際的にはその2年前の1974 年にISO 2631「全身振動の評価方法」が制定されていますが、この歴史において、日本の研究者や関係者たちのそれまでの研究成果が海外で評価され、国際標準化機構(ISO)制定に貢献したと聞いています。振動レベル計の開発に携われたことは誇らしい部分ですね。その後も、時代の流れ、技術の進歩に応じてリオンは、振動レベル計を着実に進化させてきています。」【VM-12】(1967年)振動公害調査のため、地盤振動の測定を主目的とする振動計として開発。日本音響学会で提案された振動レベル規格案に沿って設計し、人体感覚を考慮した値のほか振動速度、振動加速度を直読できる。測定下限は45 dB。振動レベル計の前身。【VM-14B】(1974年)型式承認第1号の振動レベル計。振動ピックアップは重さ800g程のPV-83。最大値レベルホールド機能を備えた。【VM-16】(1976年)鉛直、水平3方向の同時測定を実現した振動レベル計。3つの入力チャンネルを持っており、3地点同時測定が可能。これにより距離による振動減衰が観測可能。バッテリーおよび交流電源、直流電源の3電源方式。8蓮見 敏之入社以来およそ20年に渡り、主に振動計開発、騒音計開発に関わる。振動レベル計VM-53/VM-53A、3軸振動計VM-54などの開発では重要な役割を果たした。現在、微粒子計測器事業部をけん引する。山下 広大技術開発センター 製品開発室 音響振動計測器開発グループ。騒音計、振動計、分析器など、さまざまな測定器開発を受け継ぐ若き開発担当者。ISO TC108 SC4 『機械振動・衝撃の人体振動への影響』国内委員を務める。
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