RION Techinical Journal Vol.4
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 そして、「VM-16」では3方向の受感軸を持つ振動ピックアップPV-83を接続し、3方向を同時に測定できる機種に変貌。次いで「VM-51」では4ビットのマイクロコンピュータを採用し、表示ではアナログメータ以外にデジタル表示も搭載、パソコンとのシリアル通信やプリンタ印字も可能とし、以降「デジタル化」を加速させていく。 「VM-52/52A」では振動ピックアップの接地面による共振の改善に向けて圧電素子を含めた全面改良を実施。PV-83と同等感度で重さを半分以下にした小型のPV-83Bを開発する。さらに長時間測定の要求が高まるなか、メモリカードに測定値が記録できるタイプも開発し、そのデータをパソコンで管理するアプリケーションソフトもリリースする。これにより振動の測定が、連続したデータの監視を可能としていく。 そして「VM-53/53A」では振動ピックアップにおける圧電素子の面精度を向上させることで温度変化に対する安定性向上に成功したPV-83Cを開発。本体部にDSPを搭載することでデジタル信号処理や高度な演算処理によって振動レベル値の測定だけでなく、オプションプログラムを用いることで後分析が可能な実振動データの収録や1/3オクターブ分析処理が測定と同時に可能となっている。「VM-53/53A」の開発当時を振り返った。「お客様や市場の要求が何かを常に考えていました。現場の振動対策には今後分析がより身近に必要になると考え、振動レベル計に液晶ディスプレイを2 つ搭載して分析画面も同時に表示するようにしました。また、住民の苦情の中には一日に一度その事象が出るか出ないかというものもあります。より長期間の測定や記録を実現し、その振動の変化をパソコン上で確認し、日報や週報を作成する管理ソフトウェアも手掛けました。」また2015年には、JIS C 1517『振動レベル計―取引または証明用』に適合する振動レベル計「VM-55」をリリース。振動レベルおよび振動加速度レベルの瞬時値や時間率レベル、時間平均レベル、最大値・最小値を3方向同時に測定できる機能を装備し、防塵防水性能IP54 の性能を持つ。 さらに海外の人体振動に関する国際規格ISO 8041 やISO 2631 に向けた「VM-54」、ISO 8041、DIN 45669-1に適合する「VM-56」といった機種も順次リリース。振動レベル計をベースにし、演算処理を変更することで海外への対応を実現している。「人の感じ方」を追求し続けて リオンの振動レベル計の特徴は、振動ピックアップ、本体部、アプリケーションソフトウェアまで全て自社で開発・製造している点である。世界に先駆け「人が感じる振動」に着目してきたリーディングカンパニーならではの経験が、他にはない強みの一つとして挙げられるだろう。振動レベル計開発の黎明期から現在まで、振動とはどのように知覚され、どのように測定器が効果的な計測、評価や対策に繋がるかを常に模索。この根本思想が、リオンにおけるこれからの振動レベル計開発においても、市場や社会環境をリードしていく力となって今後の振動レベル計の開発にも受け継がれていくだろう。【VM-51】(1988年)マイコンが搭載された初の振動レベル計。メータ内にデジタル表示も備え、基本性能と使いやすさを主要課題として開発したモデル。パソコンとのシリアル通信や専用のプリンタで測定値の印刷出力も可能になった。【VM-52A】(1994年)メモリカード(SRAM)機能を初めて搭載し、長時間のデータが記録可能。大型液晶ディスプレイを搭載し、使い勝手の良い機種。1993年改正の計量法に対応。(写真はVM-52)【VM-53A】(2003年)メモリカード(CFカード)の採用により、長期間のデータ記録が可能。液晶ディスプレイを2 つ搭載し、分析画面、レベル波形、演算値などの多彩な表示が可能。デジタル信号処理により高精度化、高安定化を実現。99【VM-51】(1988年)

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