RION Techinical Journal Vol.5
13/24

ミライのリオンSESSION高額でリスクも高いと思うので、高重度難聴の方が効果とリスクのバランスを見て限定的に採用していくと思います。ただ、いずれは新たな技術革新が起こり、価格もリスクも低くなって飛躍的に普及すると考えています。それが何十年先の話になるかはわかりませんが、そうなる前にリオンは補聴器以外の新たな事業や価値も提供していく必要があります。私は、そこで難聴予防が一つのキーになると思っています。近年、ヘッドフォン難聴が話題にあがることも多いと思いますが、世界的には約10億人の若年成人がそのリスクにさらされていると言われており、難聴予防が注目されています。また、再生医療が進んだ世界を考えてみても、難聴になってから対処するのではなく、いかにそうならないようにするかが一番大切です。社内では、ここ数年で「補聴器」から「聞こえ」を主体とした価値の提供をするために変化してきているので、補聴器以外の「聞こえ」に関連した新しいサービスや製品が次々と生まれてくると思います。 再生医療がどれだけ進化しても処置方法を検討するための聴覚検査は必要だと思うので、リオンの医用検査機器に関してはほぼ影響しないだろうと思っています。難聴予防という点に関しては今すぐにでも、リオンの聴覚検査機器のノウハウを活かして、体温計のように家庭で聞こえを簡単にチェックできる製品など、ライフサポートを主とした製品やサービスを提供するのがいいのかもしれません。 リオンで研究開発をする上で二人が大切にしていること、若手に伝えたいことを教えてください。 行き詰まったときに過去の技術や方法を改めて振り返ってみることです。研究や開発は、新たな技術を活用することに集中してしまいがちですが、視点を変えると実は過去の技術が新しい可能性を持っていて、最新の技術と過去の技術を組み合わせることで、それぞれの長所が欠点を補い、より良いものができると思っています。これはチームで研究や開発する上でも同じだと思っていて、個人の短所をどうにかするよりも異なる長所を理解し、より発揮できる体制にすることが新たな技術、製品や価値の提供に繋がると思います。 私が若手エンジニアに伝えたいことは、「顧客志向」はできていますか? ということです。会社から「お客様第一」、「顧客のニーズを把握しなさい」と言われていると思いますが、私の場合は入社してしばらく、頭では理解できていても実践できていませんでした。特に若手のエンジニアにとっては、お客様と会う機会がとても少なく縁遠い存在であって、それが普通だと思います(笑)。そこで私は考え方をこう変えたんです。「仕事をするなかで、社内の関係も顧客と業者の関係がある。自分の手の届く範囲の人たちを喜ばせるような仕事の仕方をしよう。」と。なぜなら、今自分が携わっている仕事は、いろんな人を通じてお客様に繋がっているはずで、笑顔の連鎖、つまり自分が気持ちよく、楽しく仕事をしていれば最終的に製品を使うお客様も笑顔になってくれるんじゃないかと。うまく実践できていない方、もし共感してもらえるようでしたらぜひ参考に。二人にとって、これまで最も大きなチャレンジはどんな取り組みでしたか? 今研究していることですね。詳しいことは話せないのですが、世界初の技術開発にチャレンジしているので現在進行形の取り組みです! 大きなチャレンジは思い浮かばないのですが、製品開発、製品研究をしていく中で、新しい技術を日々学び、それを自分で活用できるようにしていくことです。仕事をする上では当たり前のことだと思いますが、これを毎日継続していくことが、個人的にチャレンジの一つだと思っています。話は逸れますが、リオンでは自主的に学んでいる人が多いと思っていて、新しい技術や製品を生むための下地になっていると思います。特に、これからは新しい価値を提供しないといけない時代なので、視野を広げるために、担当業務外で何を学び、吸収するかが重要になってくると思います。 プライベートな時間でも、無意識に仕事に関するアンテナを張っているところはありますよね。テレビや雑誌、ネットニュースなどから興味が湧く情報が強調されて聞こえたり目に入ってきたりして、それが今抱えている課題解決へのヒントになったり、新しいアイディアに繋がることがよくあります。仕事への使命感はもちろんありますが、自分がやっていること以外にも興味や関心を持つということも大切なんだと思います。 そうですね。最近、私もプライベートでAIのコンペティションサイトに参加しているのですが、個人的な興味や関心が強いです。そこで得た知識や技術を、いつかは製品に活かしたいです(笑)。蝦名俊匡技術開発センター R&D室 聴覚・検査技術開発グループ。2009年に入社後、医療機器の設計開発業務を経て2018年より聴覚検査に医療機器開発に携わる。ミライのリオンSESSION中堅エンジニアたちのトークセッション補聴器、聴覚検査機器と、「聞こえ」に関する分野で活躍する二人が、現在抱えている課題や進化するAI技術の活用法について語り合う。11

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る