カミオカンデの純水清浄度管理にもリオンの微粒子計測器 リオンの主力製品の1つである微粒子計測器(以下、パーティクルカウンタ)は、気体や液体中に浮遊する微粒子を高精度に計測する装置だ。半導体やフラットパネルディスプレイ(FPD)製造のクリーンルームや、医薬品・食品製造、病院・手術室などで清浄度の計測に大きな威力を発揮する。 リオンはこの微粒子計測分野で、世界最先端を走り続けるリーディングカンパニーだ。1977年に気中用のパーティクルカウンタ「KC-01」を日本で初めて完成させ、これを皮切りに安価で高性能なオールインワンタイプの製品群を発売してきた。微粒子の計測には、半導体レーザを照射して散乱光を検知する「光散乱方式」と、光源を粒子が通過した際の光の減衰を検知する「光遮断方式」があるが、リオンは両方式をカバー。ちなみに、液中用パーティクルカウンタは、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏のニュートリノ検出施設でも大活躍した。巨大な観測装置「カミオカンデ」は大量の純水で満たす必要があったが、その清浄度管理にリオンの製品が使用されたのである。スタンドアローン製品だけでは時代に取り残されてしまう 高い技術力を誇るリオンのパーティクルカウンタだが、ハードウェア本体のみならず、ソフトウェアにもユニークなソリューションがある。これは、もともとリオン製品を扱う販社であった九州リオンが、営業活動から顧客ニーズを吸い上げて開発に踏み切ったものだ。 九州リオンは、パーティクルカウンタと周辺機器やソフトをセットにして販売している。計測器のファームウェアはリオン本体が担当していたが、PC用ソフトの開発は九州リオンが販売戦略の一環としてスタートしたものだった。販社的な役割を担う九州リオンだが、周辺機器の開発も行う特殊な立ち位置で、社内に技術課を置いていた。技術担当の吉田弘樹は「リオン本体は計測器メーカーとして、センサ開発がメインでした。そこで我々が、インターフェースを作ることで、お客様とのビジネスの橋渡しをしていたのです」と振り返る。 九州リオンの櫛山一利も「製品単体でパーティクルカウンタが売れたら嬉しかったのですが、当時は営業的に厳しい状況でした。」と語る。 リオンは、NEC製PC-98シリーズ上で動く専用ソフトを発売していたのだが、後継の開発はストップしていた。当時は、まだPCに計測器を接続する使い方は一般的ではなかった。競合の海外メーカーはIBM PC/AT用ソフトが発売されていたが、日本語化された製品はなかったのだ。しかし計測器の世界でもいずれPCが普及する時代が来ると櫛山は考えていた。「パーティクルカウンタの売上を伸ばすためには、機器の制御やデータ処理に使えるPC用ソフトが絶対に必要だ」 櫛山は「リオン本社での開発が難しいなら、九州リオンでソフトを作りませんか? とても大変ですが、どうか勉強のつもりでお願いします」と、吉田に相談を気中微粒子計測器「KC-01」1976年に気中微粒子計測器第一号機として開発された「KC-01 」。最小可測粒径は当時トップレベルの0.3 µm。小型で100万円を切る手ごろな価格で、お客様から好評を博した。吉田 弘樹九州リオン 技術部。1983年、九州リオンに入社。補聴器、オージオメータ、騒音計、振動計、地震計、パーティクルカウンタの修理・点検・校正・設置を手掛ける。1986年から特注品の設計・製作を開始。1996年に「RPモニタ」を開発。現在は後進の教育がテーマ。社内・社外インターネットK1701 Ver.3K1906信号灯指示警報計KA-03KA-05KA-02KC-31M指示警報計コンバータコンバータK1813RIONPARTICLE SENSOR KA-03RIONPARTICLE SENSOR KA-02RPモニタ Evo10 K1701(Ver.3)(多点モニタリングシステム用)「RPモニタ Evo10 K1701(Ver.3)」は、シリアルモードのパーティクルカウンタとMultiモードRのパーティクルカウンタを最大31台(拡張160台接続)まで同時に制御することができる。左は、各機器の接続イメージ。3
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