RION Techinical Journal Vol.6
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組込マイスター組込マイスター 組込マイスターは、設計図の意図を汲んで小さなシェルに必要な部品を組み込んでいく専門家である。その作業は極めて緻密。顕微鏡を覗きながら、スーパーミニカナール極の場合1円玉にも充たない大きさのシェルに、米粒のようなサイズの3部品(DSP(注)、マイクロホン、イヤホン)をピンセットで入れていく。部品同士が触れてしまうとショートしたり、ハウリングの原因になったりするため、配置は的確かつ繊細に行う必要がある。「スーパーミニカナール極は、限界まで小さくするために設計図が非常にタイトに作られています。気合を入れて力んでしまうとすぐにリード線が切れたり、部品が壊れたりしてしまいます。最初のうちはこの力加減が掴めなくて、一生懸命にやればやるほどボロボロにしていました」 こう話すのは組込マイスターの赤塚春海。緻密な作業ゆえ誰でもできるものではない。他の補聴器の組込は上手にこなせるが、スーパーミニカナール極までいくと小さすぎて対応できないと白旗を揚げるエンジニアもいる。そんな中、赤塚は持ち前の手先の器用さを発揮して順当にステップアップしてきた。組込では3つの部品を繋ぐリード線にも注意しなくてはいけない。このリード線の存在は設計図には加味されていないからだ。設計図通りに配置してみるとリード線が届かないという事態も時々起こる。そんな時、合理的なレイアウトに配置しなおし、設計図以上に小さく仕上げるのが組込マイスターの真骨頂である。しかしながら、組込マイスターもまた、天賦の才さえあればいいというわけでもない。「機種ごとに気をつけるべきポイントを決めていて、その部分を意識するようにしています。“この機種はイヤホンの角度に気をつけなきゃハウリングする”“この機種はテグスに注意”といったように。スピードも必要ですから、それぞれの機種で求められる厳密さを判断して手際良く作ります。このような傾向と対策は経験から学びました」 組込後、蓋をして測定をするまでが守備範囲。1台にかける作業時間は大体30~40分ほどで、難易度が高い場合は1時間程度かかる。「設計図を見れば、名前を見なくてもどのスタッフがモデリングしたのか大体わかります。特徴が出るんですよね。特に、難易度が高ければ高いほど『なるほど、このようにレイアウトすればこんなに小さくできるんだ、いいアイデアだな』と感じ、やってやろうとワクワクします」赤塚春海リオンテクノ株式会社 補聴器製造部 補聴器製造課 リーダー。元歯科技工士としての手先の器用さを見込まれて入社。2014年4月から組込マイスターとして活躍している。ミリ単位の緻密で繊細な世界、同時に合理的な大胆さも必要部品配置に問題がないかチェック部品を組込し終わった後は、蓋をする前にハウリングなどが起きていないか自分の耳で確認する。視覚•触覚•聴覚と、感覚を研ぎ澄ませる必要がある。パーツを扱う力加減が難しい極小シェルにさらに小さな部品を配置していくミリ単位の世界。その小ささゆえパーツ自体も繊細なため、息をつめながらピンセットの先で優しく触る。出来上がったシェルを識別するためナンバリングを行う。製造番号等の印刷には、微細で美しい印刷が可能なオンデマンドプリンタを導入。オンデマンド印刷シェルに光沢剤を塗布する工程。独自開発した自動コーティング装置により、塗装皮膜の均一さと高品質で美しい表面塗装を実現。コーティング小指の先ほどのシェルに、職人の技で米粒大の部品を複数配置。極小のスーパーミニカナール極は、難易度が高いためマイスターのみが対応する。組込マイスター注)DSP(Digital Signal Processor)は、マイクロホンから受け取った信号をもとに、ノイズの低減やハウリング抑制などの処理を行う装置。9

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