RION Techinical Journal Vol.6
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ミライのリオンSESSIONの製品はBtoBかつ多品種です。多品種少量生産のため、生産コストは高くなりやすく、費用を抑えながら生産効率を高めることは難しい課題です。 そんな中、医療機器や環境機器の製品型式問わず組立ができる汎用的な自動機を開発できれば、究極的な生産方法になるのではと考えています。目に相当するカメラと多関節の双腕アームを持ったロボットに、部品と組立動作を学習させておき、準備した部品に応じて自動で組んでいくことができたらと思っています。実現できれば製品型式毎に設備を製作する必要がなくなり、設備投資額を抑えることができます。 設備稼働率も高くなりますし、設備設計にかかるリソースだけでなく、設備の使用管理にかかる製造技術部のリソース低減も期待できます。 極端な話ですが、補聴器や医療機器、音響振動や微粒子関連の機器も、全てベースが同じ設計だとしたら生産も共通化できますね。 またAIを設計に活用できるのではないかと思っています。人が行う設計業務を自動化するのは難しいと思いますが、AIの実用化も進んでいますし、最低レベルの設計は自動化できるようになるのではないでしょうか。 たとえば新しい部品の3Dデータを入れると、これまでに蓄積された設計データをもとに治具や金型の候補が何パターンか出てきて、それを選択して少し修正するだけで3Dプリンタで造形されてすぐにテストができる。こういったことがAIを活用してできるようになれば便利ですね。 AIに任せられるところは任せてしまい、効率化を図ることは必要になっていくでしょうね。ただ最終的に精度をあげていくところは人がやるという点は今後も変わらないのではないでしょうか。 リオンは非常に真面目な会社で、新製品が出るたび開発プロセスが多いなど少し無駄に感じられる部分もあります。また最近はリオンブランドとしての設計思想が統一化されてきつつありますが、以前は設計担当ごとにコンセプトが違う、使う部品も違うということがありました。人がやることなのでばらつきは出るにしても、最低限のところは統一して効率化できれば、頭を使う仕事に対してもっと時間を振り分けることができ、新しいものを生み出すことにつながると思います。音や振動に関することについては、これからどんな未来が考えられるでしょうか。 従来、音や振動は測定したうえで抑制することを重要視してきました。ただそれらを抑えるだけではなくて、何かに利用できないかと思っています。そのときに、原君がやっている生産技術的なアイデアとあわせて考えることができれば面白いんじゃないかな。 たとえば音や振動はエネルギーを持っています。とくに地震などは非常に大きなエネルギーを持っている。そのエネルギーを電力に変換するなどプラスに持っていければ、未来の社会にリオンが貢献していけるのではないか、世の中により必要とされる会社になるのではないでしょうか。技術的なハードルは高いのですが、騒音や地震といったネガティブなものがポジティブなものに変われば非常に面白いと思っています。 ネガティブなものがポジティブに、この発想面白くて好きです。 騒音計や振動計を使っていただいているお客様の現場には必ず騒音や振動がありますよね。そこからエネルギーを得られることは流行りのSDGs的にもいいですね。 また、騒音を逆に心地良くなるようにしてしまうといったことも考えられます。世の中には騒音の発生源はたくさんありますし、発生側ではなく受け手側で変換できれば面白そうです。たとえば電車内で他人のイヤホンから漏れる音を自分の好みの音楽に変換したり、あるいは隣の部屋の騒音を心地よい音に変換したり。 そういったことができれば多くの人が対象になります。新規事業としていけるんじゃないですか。 音響振動計測器はBtoBが基本のお仕事ではありますが、BtoCに進出するきっかけになるかもしれないですね。菊地 哲環境機器事業部 新規事業推進室。2010年に入社以来、主に営業に携わってきたが、2021年4月より新規事業推進室にて音響振動に関わる課題解決の業務を主に担当。ミライのリオンSESSION中堅エンジニアたちのトークセッション未来のリオンはどのような技術によって社会に貢献する企業となっているだろう。異なる部署に所属する二人のスタッフが、リオンの未来像を夢想する企画の第三回。取材・文/岡本典明11

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