【特許請求の範囲】【請求項1】 汗などの液体が音導部を通ってマイクロホン本体の音口に到達するのを防止するマイクロホンの防水構造であって、前記音導部の内壁部に多孔状部材を取り付け、この多孔状部材の外周部と前記音導部の内壁部が接触しまたは隙間を形成する部位に充填材を充填したことを特徴とするマイクロホンの防水構造。【請求項2】 前記充填材が、紫外線硬化樹脂またはエポキシ系硬化樹脂である請求項1記載のマイクロホンの防水構造。【発明の詳細な説明】【技術分野】本発明は、汗などの液体が音導部を通ってマイクロホン本体の音口に到達するのを防止するマイクロホンの防水構造に関する。【背景技術】補聴器などに用いられる超小型のマイクロホンは、音響信号を電気信号に変換するマイクロホン本体と、マイクロホン本体に音響信号を導くための音導部からなる。このような超小型のマイクロホンでは、従来からマイクロホン本体の音口に汗や耳垢が入らないようにすると共に、音響信号の周波数特性に著しい影響を与えない音響インピーダンスになるよう、電鋳またはエッチングなどで作製される多孔状部材をパイプ状の音導部内に圧入などにより取り付けている。また、音導部に水の表面張力よりも臨界表面張力の小さい材料で形成された音道を有する防滴体を装着した防滴形マイクロホンが知られている(例えば、特許文献1参照)。【特許文献1】実公平1-29894号公報【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】しかし、多孔状部材を音導部内に圧入などにより取り付けても、耳垢の侵入防止には効果があるものの、圧入により多孔状部材が変形するために多孔状部材と音導部の内壁部との間に隙間が形成され、外部から音導部の内壁部を伝わって浸入する汗などの液体が、前記隙間を通り抜けて容易にマイクロホン本体の音口に到達してしまいマイクロホンの性能劣化の原因になるという問題がある。また、特許文献1に記載のような防滴体を音導部に装着しても、マイクロホン本体の音口への汗などの液体の浸入防止効果が十分でなかった。本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、汗などの液体が音導部の内壁部を伝わってマイクロホンの音口に到達するのを有効に防止することができるマイクロホンの防水構造を提供しようとするものである。【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、汗などの液体が音導部を通ってマイクロホン本体の音口に到達するのを防止するマイクロホンの防水構造であって、前記音導部の内壁部に多孔状部材を取り付け、この多孔状部材の外周部と前記音導部の内壁部が接触しまたは隙間を形成する部位に充填材を充填したものである。請求項2に係る発明は、請求項1記載のマイクロホンの防水構造において、前記充填材が、紫外線硬化樹脂またはエポキシ系硬化樹脂である。【発明の効果】以上説明したように請求項1に係る発明によれば、音導部の内壁部を伝わって浸入する汗などの液体がマイクロホンの音口に到達するのを有効に防止することができる。請求項2に係る発明によれば、多孔状部材の外周部と音導部の内壁部が接触しまたは隙間を形成する部位に充填材を充填する際の作業性が向上する。【産業上の利用可能性】本発明は、音導部の内壁部を伝わって浸入する汗などの液体がマイクロホンの音口に到達するのを有効に防止することにより、汗がマイクロホンの音口から内部に浸入して性能劣化を引き起こす可能性を小さくすることができる。また、本発明に係るマイクロホンの防水構造が適用される補聴器の信頼性や耐久性などが向上すると共に、補聴器の使い勝手がよくなり、補聴器の需要拡大に寄与する。【特許請求の範囲と背景技術、発明の効果など】【図面の簡単な説明】1_________マイクロホン本体2_________音導部2a________内壁部3_________ケース4_________振動膜5_________電極6_________インピーダンス変換器7_________端子8_________音口10________多孔薄板(多孔状部材)10a_______外周部11________孔12________充填材【図1】本発明に係るマイクロホンの防水構造を適用したマイクロホンの断面図【図2】多孔状部材の平面図 以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係るマイクロホンの防水構造を適用したマイクロホンの断面図、図2は多孔状部材の平面図である。 本発明に係るマイクロホンの防水構造が適用されるマイクロホンは、図1に示すように、音響信号を電気信号に変換するマイクロホン本体1と、マイクロホン本体1に音響信号を導くための音導部2からなる。 マイクロホン本体1は、ケース3内に、音響信号の音圧を受感して変位する振動膜4、振動膜4の変位を捕えて電気信号に変換する電極5、電極5で変換された電気信号が入力されるインピーダンス変換器6などを収納している。電極5の振動膜4と対向する面はエレクトレット化されている。なお、インピーダンス変換器6の出力信号は、ケース3の外面に設けられた端子7を経て補聴器の増幅回路(不図示)に入力される。 また、ケース3には、音導部2により導かれる音響信号をマイクロホン本体1の内部に取り入れるための音口8が形成されている。音口8に導かれた音響信号は、電極5と対向しない側の振動膜4に至る。 音導部2はパイプ状に形成され、音導部2の内壁部2aには、汗や耳垢の浸入を防止するため、図2に示すように、電鋳またはエッチングなどで作製された金属製の多孔薄板10が圧入により取り付けられている。 多孔薄板10の孔11の寸法は、汗などの液体が通過し難く、且つ外部から入力される音響信号の周波数特性に著しい影響を与えない音響インピーダンスになるように設定されている。例えば、多孔薄板10としてのパンチングメタルでは直径50μの孔が多数開けられている。 なお、金属製の多孔薄板10の代わりに、樹脂製の多孔薄板でもよいし、樹脂繊維またはガラス繊維で作られた網部材を用いてもよい。樹脂製の多孔薄板の孔寸法または網部材の開口寸法も、多孔薄板10と同様に、汗などの液体が通過し難く、且つ外部から入力される音響信号の周波数特性に著しい影響を与えない音響インピーダンスになるように設定される。 更に、多孔薄板10の外周部10aと音導部2の内壁部2aが接触しまたは隙間を形成する部位には、充填材12が、隈なく充填されている。充填材12には、紫外線硬化樹脂が用いられる。また、1液(加熱硬化)または2液(常温硬化)のエポキシ系硬化樹脂を用いることもできる。 そして、充填材12により、多孔薄板10の外周部10aと音導部2の内壁部2aにより形成される隙間は、全て塞がれることになる。 紫外線硬化樹脂を充填するには、紫外線硬化樹脂を注射器状の器具に注入し、多孔薄板10の外周部10aと音導部2の内壁部2aが接触しまたは隙間を形成する部位に、紫外線硬化樹脂を点滴して毛細管現象により隈なく染み込ませる。そして、染み込んだ紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して硬化させればよい。充填材12に紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化樹脂を用いることで、充填の作業性が向上する。 また、紫外線硬化樹脂を充填する方法として、予め音導部2の内壁部2aに紫外線硬化樹脂を塗布した状態で、多孔薄板10を音導部2に圧入して取り付け、その後に塗布した紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して硬化させてもよい。 以上のように構成した本発明に係るマイクロホンの防水構造の作用について説明する。外部から音導部2の内壁部2aを伝わって浸入する汗は、多孔薄板10に到達すると、紫外線硬化樹脂などの充填材12により、音導部2の内壁部2aを伝わっていくことができなくなるため、多孔薄板10の中央部に導かれる。 そして、多孔薄板10の中央部に導かれた汗が、音口8に到達するには多孔薄板10に開けられた孔11を通過しなければならない。しかし、汗が孔11を通過するのは容易ではないため、孔11を通過するのに時間が掛かる。 従って、汗がゆっくり孔11を通過するので、汗が蒸発するための時間が確保される。よって、汗がマイクロホンの音口8に到達する可能性が低くなり、汗がマイクロホンの音口8から内部に浸入して性能劣化を引き起こす可能性を小さくすることができる。13
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