14取材・文/冨田 大介ノルソニック社の優位性はどこに? ノルソニック社は1967年に設立され、首都オスロから約30km南西に位置するトランビーに本社を置く。連結売上高12億円(2021年度)、建築音響分野では欧州各国の市場シェア25~50%を占めるなど確固たる存在感を示し、音による方向識別機能を搭載した環境モニタリングシステム「NorCloud」などの革新的な製品やサービスをリリースしてきた。その一方で、同社の社員は約40人と会社の規模は小さい。R&Dエンジニアのカール・ヘンリック・エイドフォシュ氏が、敷地、建物、社員数のどれも「ノルソニックよりはるかに大きい」と驚きをもって語るようにグループ全体で1,000人近い社員を有するリオンとは対照的な感もある。小さいながらも欧州市場でトップクラスのシェアを獲得し、他社には無いユニークな製品を生み出すノルソニックの社風とはどのようなものなのだろうか。 まずマネジメント職も含めてフラットな組織であることが特徴だ。ノルウェーでは5~8年ごとに転職することが一般的だが、ノルソニックの社員の多くは30年以上の社歴があり、さながら大家族のように社員同士がお互いのことを認め合い尊重している。そして社内の所属や仕事内容もフレキシブルで、もし当初のポジションで望んだような結果が得られなかった場合でも、より適性に合うポジションにキャリアチェンジすることができる。「やりたい仕事をして、良い同僚がいれば、多くの社員が長く働いてくれる」というノールビー会長の言葉は、社員それぞれの個性や能力、考え方を認め合いながら活躍できる環境が整っているノルソニック社の風土をよく表しているのだろう。 ノルソニック社の現在の主力製品は、建築音響製品や環境モニタリングシステム、キャリブレーションサービスだ。特に環境モニタリングシステムは、クラウドテクノロジーを取り入れるなど現在最も成長している製品で、音が来る方向を識別できるという競合他社にはない特徴がある。クラウドシステムは目下環境モニタリングで導入されているが、ほかの製品でも展開することを計画しており、クラウドノルソニック社の社屋2022年7月、リオンがノルウェーの音響計測器メーカーであるノルソニック社の株式を取得すると発表した。そして2022年11月に株式を取得し、ノルソニック社はリオングループの一員に加わった。本稿では今年8月に来日したスヴェイン・アーネ・ノールビー会長をはじめとするノルソニック社の社員に同社の社風や今後への期待について聞いた。BUSINESS FRONTLINEノルウェーの音響計測器メーカー、ノルソニック社に聞く「リオンとノルソニック社の未来」
元のページ ../index.html#16