RTJ_vol9
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15テクノロジーの活用こそ「今後数年の最重要事項」(ノールビー会長)だという。さらに将来的にはクラウドシステムだけではなくAI(人工知能)機能を活用することも研究中だ。 ■■■■■■■■■■■■■■  このように他社にはない魅力的な製品を生み出しているノルソニック社だが、それを可能にしている一つの要因が、販売店との関係性だ。通常、販売店はメーカーからユーザーへの流通を担っている。しかしノルソニック社はユーザーからメーカーという逆の流れを作り出すために販売店を活用する。ノールビー会長によれば、18か月に一度、同社は各地域の販売店を集めてグループインタビューを行っている。そこでエンドユーザーのニーズや不満を吸い上げ、今後追加すべき新しい機能や製品の開発指針とするためだ。「歴史的に私たちはオーダーメイドともいえる製品開発を行ってきました。ユーザーの声からヒントを得て、私たちが素晴らしい機能だと思えば、それを調査研究して製品化してきました」(ノールビー会長)。ユーザーのニーズに的確に応えていく柔軟な製品開発こそノルソニック社らしい製品の源泉なのである。 リオンとノルソニック社の連携は、1980年代後半からとその歴史は古い。米国市場に向けて、リオンの音響計測器とノルソニック社の音響計測器および分析器を一つのソリューションとして売り込むためだった。この戦略は成功し、これを契機としてノルソニック社とリオンは着実に関係性を深めていく。欧州市場でもOEMや製品カスタマイズを協働して行うなどの協力関係を作り上げていった。「これまでリオンが競合だと思ったことはない、私たちの友好的なパートナーであり、とても信頼している」とノールビー会長は語る。2015年以降、ノルソニック社のタッピングマシンをリオンが販売する一方で、リオンの音響計測器をノルソニック社が販売するなど、両社は製品ごとの連携で関係性を変化させ、その後市場単位での連携へと発展させていった。このように30年以上の時を費やし、着実に連携を深めていった結果が、今回のリオングループへの仲間入りに帰結したのである。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 今回実現したリオングループへの参加によってノルソニック社が期待するシナジーの一つは、リオンが実績を重ねてきたアジア市場への参入だ。リオンが影響力をもつ販売チャネルを利用して販路を拡大していきたいという。また、製品ラインナップの拡充も期待しているシナジーの一つだ。ノルソニック製品にはない、リオンが得意とするミドル級からローエンドの騒音計や振動計などの製品が、ノルソニック社の製品ラインナップに加わることで、新規顧客の開拓が可能になると期待を寄せている。期待するシナジーの3つ目は効率的な製品開発だ。ノルソニック社のヘンリック・クリストファー・ベルク氏はリオンの新製品開発プロセスが「刺激的でプロフェッショナルだった」と振り返る。ノルソニック社では製品仕様をすべて決めずに開発をはじめ、開発の過程で仕様を決めていく。そのためノルソニック社では開発から製品リリースまでにかなりの時間を要してきた。一方で、リオンではデザインや仕様をまず決めてから製品開発を行い、次に大量生産の方法を検討するという具合に製品リリースまでの最短距離を進む。「リオンは新製品開発に優れた仕組みがあり、段階を踏んで開発を行っている。私たちが学ぶべき点だ」とダニエラ・トレド・ヘルボー氏。すでに両社間では人事交流が始まっており、マネジメント層のみならず、社員同士での学びあいが始まっている。市場、製品そして研究開発で、両社の強みを活かしあい「No.1サプライヤーになる」(ノールビー会長)ことを目指す。さまざまな企業文化が異なるノルソニック社とリオン、それぞれの特徴を掛け合わせてリオングループの中で十分に活かすことができれば、今後リオングループが世界市場で大きく飛躍することも期待できるはずだ。スヴェイン・アーネ・ノールビー氏1980年よりノルソニック社のエンジニアからキャリアをスタートさせ、1982年からマーケティングマネージャー、1989年からは取締役会の一員として同社の経営に参画し、1991年にCEOに任命された。2005年からはノルソニック社の会長職に就任し、世界中で信頼される各種音響計測器の製造、販売を加速してきた。ノルソニック社のエンジニアが行うキャリブレーションの様子ノルウェーの首都、オスロ。夏の深夜1時だが、白夜のため、これだけ明るいダニエラ・トレド・ヘルボー氏■■■■■■■■■■■■■■■■■ヘンリック・クリストファー・ベルグ氏■■■■■■■■■■■■■■■夏は夜まで明るいため、金曜の仕事が終わった後、皆で裏山へハイキングカール・ヘンリック・エイドフォシュ氏■■■■■■■■■■■■■■■

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