ろうと「KC-20A」ってどんな製品?鈴木 気中パーティクルカウンタは、例えば清浄度の高いクリーンルームなどにおいて、気中に含まれる0.1 µmから5 µm程度の微粒子を測定する計測器です。これに対して「もう少し大きい粒子が測定できる機器が欲しい」とお客様からの要望があって誕生したのが、今回ご紹介する「KC-20A」。10 µm、20 µm、30 µm、50 µm 、100 µm以上の5段階の粗大粒子をリアルタイムで測定できます。 お客様のご要望とは?鈴木 多いのは自動車メーカーからのご要望で、ボディ塗装の工程で使いたいというオファーでした。実は、10 µm以上の粗大粒子は、黒い紙に落とすと肉眼でもなんとか見えるくらいの大きさなんです。そのため気づかずに塗装してしまうと、塗装面に膨らみができてしまうんですね。それを業界用語で「ブツ」と呼ぶのですが、ブツが出ると、一回塗装を剥がしてまた塗装をするなど対策が必要になってくる。ですので歩留まりを少しでも抑えるために、大きい粒子が測れるパーティクルカウンタが欲しいということでした。永井 自動車のボディ塗装は、クリーン環境で行われるのですが、乾燥させるのは一般環境が多いので、花粉(30 µm~35 µm)や黄砂(0.2 µm~20 µm)が舞う時期や、風が強い日は影響を受けます。このサイズの粒子は空気中に漂わず自然に沈下しますので、「KC-20A」で粒子が多く測定された場合は、しばらく時間を置くなどの対応をしてから作業をされているようです。ストロングポイントは?永井 吸引量の多い競合商品がないことです。30 L/minで吸引して粗大粒子を測定できるパーティクルカウンタは現状、「KC-20A」しか存在しません。逆に課題は、製品の重さや使用時の作動音です。大きい粒子は重いので測定にはそれなりに気体の流量や吸引力が必要になります。そのため、大きなポンプも積んでいますし、音も大きくなってしまうんです。鈴木 前述の5粒径を同時に測定できることで、空気中の粒子分布がどうなっているのか推測しやすいところです。例えば、100 µm以上のものも含めて全体的に粒子が多い場合は工場自体に何かトラブルが発生していると考えられます。30 µmだけが突出して多ければ、花粉かな?とサイズから想像できるケースもあるでしょう。実は、「KC-20A」の前身モデルとして1989年に販売された「KC-20」という製品があるのですが、1段階しか表示できませんでした。そこで、お客様のニーズを踏まえて5段階の粗大どのように使用する?永井 パーティクルカウンタは、実際に作業する場所と同じ高さか、それよりやや低い場所に置くことが基本ですので、そのような場所に据え置きする場合と、台車等に乗せて移動させながら測定する場合があります。「1時間に1回、1分間測定する」など、測定の設定はお客様側でアレンジできますし、RS-232Cインターフェースが標準装備されているので、コンピュータによる自動測定を行っているお客様もいらっしゃいます。現場でどのように活用されている?永井 自動車メーカーでは、部品の生産ラインでも使っていただいており、ある製鉄会社では周辺の環境衛生への配慮に、「KC-20A」を活用いただいています。フィルムメーカーやプリント基板メーカーでもご使用いただいています。鈴木 最近だと、サーバなどを管理している企業のデータセンターで使われている例があります。データセンターでは部屋の空気を冷やすために排気ダクトを開きますが、そこからホコリなどが入ってくることがあるんです。そのようなホコリは、基板コネクタ部のショートや冷却用ファンの故障につながる可能性があるので、「KC-20A」で測定して管理しているようです。 「KC-20A」の今後の可能性は?永井 「KC-20A」で測定できる10 µm~100 µmという粒径は、花粉や黄砂など人体に影響を及ぼすことが多いので、医療分野での活用が増えるとうれしいですね。鈴木 空調メーカーが花粉対策を検証する際に「KC-20A」を使っているんですが、このように健康関連の測定でもっと活躍して欲しいです。興味のある方は、デモ機をお貸出しているので、気軽にお声がけください。粒子をリアルタイムで同時に表示できるように改良した製品が「KC-20A」なのです。測定をスタートすると5段階の粒子を同時に測定し、すぐに結果が表示される。結果は2列にレイアウトされ、左側の数字列は累積値、右側は5段階それぞれの検知数を示している。見やすい液晶画面は体積換算の表示も可能だ。製品の上部についている漏斗のような形状をしているこのパーツは、「等速吸引プローブ」と呼ばれる試料空気の吸い込み口。30 L/minの試料空気を吸い込む吸引力があり、100 µm以上の大きな粒子も漏らさずにしっかりとキャッチする。気中パーティクルカウンタ「KC-20A」浮遊粗大粒子をモニタリングし、5段階の粒径をリアルタイムで同時に測定する気中パーティクルカウンタ。30 L/minの試料空気流量を誇り、短時間で作業環境の測定が可能。11
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